新宿にある住友ホールで6月30日に行われた「コナミソーシャルコンテンツセミナー」へ行って来ました。 その時のメモです。
コンシューマー(家庭用)ゲームを始めとして、アーケードなど様々なジャンルでヒットタイトルを創出しているコナミグループ。
ソーシャルゲームにおいても、みなさんご存知の通りGREEなどで大進撃を続ける「ドラゴンコレクション」を筆頭に、アニメ化もされMobageプラットフォーム上で表彰もされた「戦国コレクション」などのコレクションシリーズなど様々なタイトルを展開されています。
今回は「ドラコレスタジオ」のマネジメントレイヤーの3名が登壇され、組織、コンテンツ、技術の3つの方向からのお話となりました。
■日時 2012年6月30日(土曜) 13:00〜
■場所 新宿住友ホール(新宿住友ビルB1)
- 13:30 開場・受付開始
- 14:00 冒頭挨拶
- 14:10 ドラコレスタジオ全体戦略 兼吉エグゼクティブプロデューサー
- 15:00 ゲーム制作技術について 車田統括マネージャー
- 15:40 ゲーム運営、企画について 廣田マネージャー
- 16:20 会場で懇親会(希望者)
- 17:00 終了
ドラコレヒットの要因
兼吉エグゼクティブプロデューサー
- 略歴
- 入社後メタルギア2サンズオブリバティのプロジェクトに、その後メタルギアのモバイル版(オンライン)、くるりん(Twitter的なもの)、ドラコレ、戦コレなど。
- 現在は「ドラコレスタジオ」の「兼吉プロダクション」
(ドラコレスタジオ、各プロダクションについては車田さんがこの後説明されます)
- ソーシャルゲームに対するクリエイターの意見
- ドラコレ以前の社内の空気
- ソーシャルコンテンツ≒ライトゲームという風潮で軽視されていた
- PS3やPSPなどのコンソールゲームを手がけるクリエイターが、わざわざ手を出す分野ではないという空気を感じていた。
- 兼吉さん的には
- ソーシャルゲームがライトに感じるのは見た目だけ。遊ばれ方はコンソール以上にヘビー。
- 単なるカジュアルゲームとして捉えるのはクリエイターとして非常に危険。
- (コンソール)ゲームクリエイターに足りていないもの
- モバイルに対する意識の低さ
- コンシューマー機とくらべるとスペックが低いため軽視される
- 視点を変えれば魅力的なプラットフォーム
- 全国民が1台以上を所有
- 全端末が常にオンライン
- 誰でも1日1回以上は使用する
- 限られたリソースで最良のゲームを作るのがクリエイターの醍醐味
- 削る勇気
- コンシューマーゲーム
- 多くの機能を組み込んでお客様の利便性を向上させる
- ソーシャルゲーム
- 余計な機能があると利便性が低下。必要な機能だけを厳選して組み込む必要がある。
- 長年コンシューマーに携わっていると、機能を削るのは満足度が下がってしまうのでは?という恐怖感が生まれる。しかし携帯自体は利便性がそこまで高くないことを意識する。
- 「モチベーションフロー」「ゲームフロー」を構築して本当に必要なものを吟味する。
- スピード感
- コンシューマーは数年間のプロジェクトが一般的。
メタルギアは3年程度。長いタイトルは4年物などもある。 - 開発プロジェクトが多いため、多数の承認プロセスを得ないと着手できない。どうしても開発開始まで長い時間がかかってしまう。
- ドラコレは半ば強引に着手した。
解決を図っていたら余計に時間がかかる。強引に制作しているうちに意識も変わる。
- 制作手法
- すべての画面遷移、仕様書を細かく作成した
- コンシューマーの手法を踏襲
- 他のSAPさんはドキュメントを作らないという風潮だったが、当時自分たちが目指しているカードゲームがあまりなかったため、開発者との意思疎通を目的としてドキュメント化を進めた。
- 製作過程で皆の意見で柔軟に習性
- ドキュメントはしっかり作ったが、仕様書通りに作る必要はないという考えをスタッフに意識させた。
- プログラマーやデザイナーなどが良いアイデアを思いつけば、そのまま採用するなど。
- きっかり三ヶ月でリリースへ
- 他社SAPさんと同じ条件にこだわった
- 開発に関わったスタッフが全員、成功を疑わないほどリリース時は全員自信に満ちていた。
- リリース後の動き
- 初日は全く伸びなかった
- 各KPIの初動はコナミの他SNS系のタイトルと比べても鈍かった。
- 理由は分からないが、カードバトル自体は認知されていなかったのでは…。
- 自信満々でリリースしたので正直かなりへこんだ。
- 対策
- 友達招待による数字が上向く
- 結果として
- 3週目で男性1位、4週目で総合1位
- 低いKPIがひとつもない
- 「贅肉がなく筋肉のかたまりのようなアプリだ」(by GREE担当者)
- なぜコナミは成功したのか
- グループ内のシナジーが生んだ
- 特定のジャンルだけではなくバラエティー豊かな
- タイトル群(恋愛シミュレーションからスポーツなど様々)
- アーケード、家庭用ゲーム、(遊戯王のような)カードゲーム、コナミスポーツ、カジノ系の事業など
- グループ内ノウハウを共有する仕組み
- 開発事例報告会
- 大規模な社内表彰
- チャレンジすることが最も重要だという全社的な企業風土。
- お客様を大事にする姿勢
- すべての事業で、目先の利益にとらわれないよう徹底
- 内部リソース主体の開発体制
- ほとんどの主要タイトルを自社リソースで開発。
- 自社内にノウハウが蓄積されていき、次のヒットを生み出す際の大きなチカラとなる。
- 今後のコナミの取り組み
- 各国に拠点整備を進行中。
- コンテンツのリッチ化の波に乗り遅れないよう制作スタッフの拡充をおこなっている
- 現状のゲームモデルにとらわれない新機軸のゲーム開発
ドラコレスタジオの運営体制
車田統括マネージャー
- 世界一のソーシャルコンテンツスタジオ
- ドラコレスタジオ制のゲームがや市場に与える影響は国内ではトップクラスだろう
- 同様に各国のNo1になろうとしている。それを続けることで世界1になりたい。
- 2012年度方針
- 国内市場での伸長
〜 各プラットフォームにあわせたコンテンツ供給強化 - 海外市場への進出
〜 国内市場のノウハウをグローバル展開へ活用 - 新サービスの展開
〜 従来のコンテンツサービスとは違うビジネス展開。グループのシナジーをいかす
- ドラコレスタジオ体制
- 5つの制作プロダクションの下に、制作チームがいる。
- 全体で600名程度
- 「兼吉プロダクション」が最大規模
※記憶を頼りに上図を作っているので、細部は異なるとおもいます(^^;
- ドラコレスタジオの誕生
- 2011年1月
- ハドソンの子会社化で完全にソーシャルコンテンツ制作シフト。
- 同年6月
- ドラコレAndroid番を皮切りにスマフォ対応の本格化
- 同年11月
- ソーシャルコンテンツの制作プロダクションを統括する組織としてドラコレスタジオが誕生。
- それまでバラバラだった制作チームを、ノウハウの共通化するためにひとつのスタジオにした。
- 基本指針
- 受け身ではなく自ら動いて行く
- プロ意識を盛って取り組む
- 仕事の線引はしない
- 情報伝達は簡潔に行う
- 自分の考えはしっかり伝える
- マネジメントとスタッフライン
- マトリクス型の組織(参考)にしている
(マトリクスという言葉は使われませんでしたが、経営学で言うところのそれでした)
※記憶を頼りに上図を作っているので、細部は異なります(^^;
- 制作チーム構成
- 比較的一般的な構成
- プロデューサー、ディレクター、プランナー、運営、デザイナー、プログラマー、プロモーター、分析
- チーム規模
- 初期フェーズ 2〜5名
- 運営開発フェーズ 10〜30名
- KPIを見ながら、角度の高いところには人を一気につぎ込む。
- コレクションシリーズの運営思想
- お客様対応はプログラマーが直接行なう場合もある。(これについては質疑応答を参照)
- 制作環境
- パーテーション廃止
- PCとキャビネットを持てばすぐに移動できるように
- 特定ゲームにリソースを集中投下しやすくするために。すぐに席を移動し島を作成することでアサインが簡単に行えるようになった。
- 会議室
- 大きなモニター
- 特になにもないときは意識せずにスタッフが情報に触れられるようにした
- ニュースを自動で収集し表示
- 様々なプラットフォームのランキング表示
- 毎日、朝会で数値(KPI)を表示し、今日の動きを決めていく
- リフレッシュルーム
※GameBusinnes.jpの記事画像より引用
新しくなったばかりのオフィスも魅力的だ
- コンテンツの多面展開
- 今後はコナミグループがこれまで行なってきた事業領域などを活かしていきたい。
- 家庭用ゲームソフト、ソーシャルゲーム、アーケード、カードゲーム、おもちゃ、ホビー、アニメ、映像、音楽、携帯、オンラインゲーム
ソーシャルコンテンツを支える技術
廣田マネージャー
今回はエンジニアの方の割合が少なかったのもあり、技術的な深い話はありませんでした。- 略歴
- アミューズメント機器のプログラマー
- コナミは「eアミューズメント」でゲームセンター間をネットワークでつなぐ事業を行なっていた。
- オンライン系の部署に異動後、ドラコレ担当。
- システムとは
- システム = インフラ × アプリ
- どちらか片方に依存したやり方を取るのではなく常に両方を考える
- ミドルウェア
- 一般的なLAMP環境
- CentOS5、Apache2、PHP5+APC、MySQL(InnoDB, MyISAM)、Memcched
- その他オープンソースの活用
- membase、kyotoTycoonなどなど
- ドラコレのシステム拡張遍歴
- リリース直後
- LB x 1
- Web 2core x 6
- DB 4core x 6
- 2週間後
- LB × 2
- Web 4core x 8
- DB 8core x 9
- 1ヶ月後
- LB×4
- Web 8core x 30
- DB
- 8core x 49 (クラウド)
- 8core x 7 (リアルマシン)
- キャッシュ 8core x 4
- 3ヶ月後
- LB × 6
- Web 8core x 40
- DB
- 8core x 66 (クラウド)
- 8core x 22 (リアルマシン)
- キャッシュ 8core x 4
- 現在は非公開。いっぱいある。
- システム運用のPDCA
- 障害発生時の基本フローは以下。
障害発生 → 応急処理
↓
再発防止策
↓
システム定例 ← 数値監視
(課題、共有)
↓
システム拡張改変計画 → メンテナンス → 効果検証
- 数値監視例
- システム定例では、ディスクI/Oなど常に数値を見て次の対策を練っている。事前に手をうたないとお客様にも迷惑をかけるし、内部のスタッフも精神的につらい。
- 気をつけていること
- アプリとインフラの両方を理解した上でベストプラクティスを導き出す(片方だけに依存しない)
- システムの都合だけで「やりたいことができない」という状態にはさせない。というプライドをもってやっている。
- 内製技術の社内展開
- 現場から生まれた実践的なライブラリを他タイトルへ展開
- ライブラリの完成度向上
- エンジニア同士の交流が活発化
質疑応答
- ドラコレを思いついたきっかけ
- 王道のファンタジー+バトルで作りたかったので、特に難しく考えず王道でい行こうというのが最初の思想。
- (コンプ)ガチャのはなし
- 昨今の問題は真摯に受け止める必要があるが、特にガチャに依存しているわけではないので心配はしていない。
- 露骨な売上よりもゲーム性で勝負をかけるべき。例えばイベント中などでのユーザー同士の交流など。
- システムの情報共有について詳しく
- 再発防止策は最終的には属人化せず、マニュアルにする。
- 新人には議事録を徹底的に読ませている。
- 問い合わせをエンジニアが答えていると話されていたが、詳しく
- 一次受けはコナミのセンター
- 二次受け以降でプログラマーやプランナーにふる。判断はディレクター。
- プロモーションなどで社内の反発はあった?
- リリース後にKPIや売上を見せることで実施したので、社内からの反発などは発生しなかった。
- むしろ企画を通して開発着手までに色々あり時間がかかってしまった点が課題。
- 海外展開、北米の次は?
- 次はアジア。12年度中を視野にいれて動きたい。
- KPIで重要視しているところは?
- 継続率が1番。それをもとにDAUを上げていく。
- イベントのスケジュール感などを詳しく
- プランニング1週間、実装2週間というのもあったが、それだと自転車操業気味。
- 現状はイベント開発ラインを2本に増やすなどで対応している。
- 海外ローカライズ、運用など
- グラフィックのテイストをどうするか迷っているが、まずはこのままのテイストで勝負してみる。
- UI部分はもう少しリッチなものに。
- 運用は現地で行うのが理想。ただスピード感的に当初は国内からはじめるかも。
- ソーシャルグラフ、バーチャルグラフ
- 国内だとほぼバーチャルグラフが人気。
- ゲーム自体はバーチャグラフの方がやりやすい(知人に知られたくない)が、今後は変わっていくかも。いまはその舵取りが難しい。
- デバグ期間は?
- 開発期間の最後一ヶ月くらい。
- レアリティの構成比
- ちょっと今わからないです。
- 友達招待以外のユーザー増加施策等のプランあった?
- いざとなったら実弾(プロモ)
- 当時は自信があったので、バイラル戦略以外はあまり考えていなかった
- メンバーのモチベーションをどうやってたもってる?
- 新しい物をつくることに対し、エンジニアはモチベーションが高い。世の中にない物を作っていこうと言い続けてきた。
- メンバーの個性(趣味、過去)を見てアサイン方針を決めている。
- プログラマ200人弱に毎日代わる代わる面談しそれぞれの強みを引き出していく。
- 初期人数
- 一般的(2−5名)な人数。
- これ以上の投入人数になる場合はほとんどない。
- ゼロから作ることはほとんどない。ドラコレスタジオの資産を流用するといった工夫はしているので、少人数でクオリティの高いものが作れるような工夫は常に行なっている。
- 海外展開で、文化の違いによる開発戦略を詳しく
- 例えばメタルギアは海外を重視しているが、少し変わった作り方をしている。まずアメリカ版を作って、日本にローカライズ。ソーシャルゲームでは正直なところまだ試行錯誤。
- ディレクションする部隊は少なくとも現地、その地域のカルチャーを取り入れていきたい。(開発はほかの地域でも良いかも)
- カルチャライズをどの程度やるかはあるが、国内で作ったものがそのまま通用することも十分ありえることを、各国に行って肌で感じている。
リンク
今回のセミナーは「GameBusiness.jp」「インサイド」などゲームなどデジタルエンタテインメント系のニュースサイトを運営されている株式会社イードさんが運営をされていました。連載は終了していますがGameBusiness.jpで同テーマの連載が行われていました。こちらも興味のある方はどうぞ。
これからのKONAMIソーシャルコンテンツ・・・躍進するKONAMIのソーシャルコンテンツ(4) 躍進するKONAMIのソーシャルコンテンツ
「躍進するKONAMIのソーシャルコンテンツ」の最終回では、KONAMIが考えるソーシャルコンテンツの今後について聞いていきます。
[2012年6月22日 17:49] ソーシャルコンテンツを支える基盤スタッフ・・・躍進するKONAMIのソーシャルコンテンツ(3) 躍進するKONAMIのソーシャルコンテンツ
コナミデジタルエンタテインメント ドラコレスタジオ 兼吉氏「躍進するKONAMIのソーシャルコンテンツ」の第3回ではゲームを支える基盤であるネットワーク運用について聞いていきます。
[2012年6月15日 17:51] 日々の「カイゼン」でゲームが進化する・・・躍進するKONAMIのソーシャルコンテンツ(2) 躍進するKONAMIのソーシャルコンテンツ
ドラコレスタジオ兼吉氏ソーシャルコンテンツやオンラインゲームならではの要素が「運営」です。いかにゲームデザインが優れたゲームであっても、日々の運営がおざなりであれば、ユーザーは一時的に遊んだとしても直ぐに離れていってしまいます。
[2012年6月9日 09:11] ゲーム会社の総合力とソーシャルの融合・・・躍進するKONAMIのソーシャルコンテンツ(1) コナミ 躍進するKONAMIのソーシャルコンテンツ
家庭用ゲームからアミューズメント施設向けゲーム、オンラインゲーム、カードゲーム、携帯端末向けコンテンツなどで数多くの実績を持つコナミデジタルエンタテインメント。
[2012年6月1日 17:05]
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。